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スペシャルインタビュー①晴れ晴れ 石崎美智さん
#インクルージョン「できない」を、みんなで「できる」に。
川口のまちと育てるharebareのものづくり

トントゥフェスティバルで出会う人やもの。その背景には、それぞれの思いや物語があります。
今回ご紹介するのは、埼玉県川口市で焼き菓子づくりに取り組む「harebare(晴れ晴れ)」です。
harebareでつくられている商品のひとつが、川口の鋳物文化から生まれた「ベーゴマクッキー」。その誕生までをたどると、一人ひとりがものづくりに関わるための試行錯誤と、川口という地域への思いが見えてきます。
今回は、harebareを運営する石﨑さんに、「はたらく」ことやベーゴマクッキーが生まれるまでの道のり、地域とのつながりについて伺いました。
「生きてもいいかな」と思える場所を

harebare(晴れ晴れ)を運営するNPO法人ヒールアップハウス代表・石﨑美智さん
harebareが働く場所として生まれたのは、2008年4月。
石﨑さんは、もともと看護師として働いていました。harebareに関わり始めたのも、最初は1年間だけのつもりだったといいます。
ところが、そこで出会った障がいのある人たちから日々聞こえてきたのは、「死にたい」という言葉でした。
それまで「生きたい」と願う人の命を支えてきた石﨑さんは、最初は「生きたいと思っていない人たちを、自分は支えられない」と感じたそうです。
それでも自分にできることを考え続け、「『生きたい』までいかなくても、『生きてもいいかな』と思えるようになること。それも命を救うことなんじゃないか」と考えるようになります。
1年で辞めるつもりだった場所で、気がつけば長い年月を過ごすことになりました。
「はたらく」ことで感じられる幸せ
石﨑さんが考え続けてきたのが、「人はどうしたら幸せを感じられるのだろう」ということでした。
そんなとき、働くことを通して、人は「愛される」「褒められる」「役に立つ」「必要とされる」という幸せを感じられる、という考え方に出会います。
「ご飯を食べられるって幸せだよね、布団で寝られるって幸せだよね、と伝えても、それだけで人が幸せになれるわけではない。でも、働くことでこんなに幸せを感じてもらえるんだ、と思ったんです。」
以来、石﨑さんは「はたらく」ことを大切にしてきました。
それは、ただ仕事をすることだけではありません。誰かの役に立つこと、地域とつながること、生きていくことまで含めた「はたらく」です。
パン屋から始まったものづくり
harebareがはじめに取り組んだのは、パンづくりでした。
ところが、パンには気温や発酵時間、生地を扱うときの力加減など、職人的な感覚が必要です。「ちょっと」「そっと」といった感覚を言葉で伝えることは簡単ではありません。
さらに、納品時間に合わせて焼き上げなければならない難しさもありました。
石﨑さんの出勤時間は、朝5時から4時、やがて3時へ。夜中からパンをつくり、一度家に戻って子どもを保育園へ送り、また発酵時間に合わせて戻る。パンが売れるほど、生活そのものがパンの時間に合わせて変わっていきました。
そして気になったのが、つくる人によって仕上がりが変わったとき、それが本人にとって「できなかった」という経験になってしまうことでした。
「パンは、うちには向いていないんじゃないかな。皆さんのモチベーションを下げるだけなんじゃないかなと思ったんです。」
そこで、新しいものづくりを探し始めます。
クッキーづくりでも続いた試行錯誤
次に挑戦したのが、焼き菓子でした。
クッキーなら発酵時間に追われず、もし日中にうまくいかなくても、あとからつくり直せる。「失敗できない」というプレッシャーから少し離れられると考えました。
しかし、ここでも壁にぶつかります。
生地を平らにして型で抜く。「そっと抜いて」と伝えても、その力加減を伝えるのが難しい。生地を棒状にして切る方法も試しましたが、同じ厚さに切ることが難しく、焼き色にも差が出ます。
どうしたら、みんなでつくることができるのだろう。
試行錯誤は続きました。
鋳物工場で見つけた、ベーゴマというヒント

川口の鋳物文化にゆかりのあるベーゴマ
そんな頃、石﨑さんは川口の鋳物工場を見学します。
工場の片隅にあった、たい焼きの型を見て「この鋳物とお菓子を組み合わせられないだろうか」と考えました。
さらに、川口では鋳物で「ベーゴマ」をつくっていたことを教えてもらい
「ベーゴマのクッキーをつくれないだろうか」というアイデアが生まれます。
まず焼き菓子のコンテストに出場し、優勝。「私たちは、賞をもらえるくらいのお菓子をつくれるんです。」と言えるものを得てから、鋳物工場やベーゴマに関わる人たちへ相談に向かいました。
そうして、ベーゴマクッキーづくりが動き始めます。
クッキーのつくり方にも大きな発見がありました。
生地を伸ばして抜くのでも、棒状にして均等に切るのでもなく、「型に詰める」。
この方法なら、一人ひとりの個性や得意なことを生かしながら、みんなでつくることができる。
何度も「難しい」と感じてきたクッキーづくりに、新しい道が見えてきました。

ベーゴマクッキーの製造風景。型に生地を詰める工程を通して、それぞれがものづくりに参加しています

ベーゴマクッキーの製造に使われている焼き型。ベーゴマの形に生地を詰めて焼き上げます
「川口のお土産をつくりたい」
ベーゴマクッキーには、石﨑さん自身の川口への思いも込められています。
石﨑さんの出身は熊本県。熊本では、スーパーに行けば地元の野菜が並び、その土地のものを食べることが自然な環境で育ったといいます。
ところが埼玉へ来た頃、「埼玉には何があるの?」と聞くと、「何もないのがいいところ」と言われることがありました。その言葉に、ずっと違和感を抱いていました。
熊本へ帰るときにも、川口のお土産が見つからず、隣町の草加せんべいを持って帰る。
「川口のお土産はないのかな」
そんな思いがありました。
そして、自分が熊本という故郷に支えられてきたように、川口で育つ子どもたちにも、自分の暮らす地域に愛着を持ってほしい。
その思いと川口の鋳物文化、harebareのお菓子づくりが重なり、ベーゴマクッキーという形になっていきました。

埼玉県川口市にあるharebare。焼き菓子づくりを通して、地域とのつながりを育んでいます
一つの商品として、地域へ
石﨑さんが商品づくりで大切にしてきたのが、品質です。
クッキーをつくり始めた頃、お客様とのやり取りをきっかけに、商品を届けるには、まず社会からの信用を得る必要があると感じたといいます。
そこで最初は「障がいのある人がつくった」ことを前面には出さず、一つの商品として勝負することを決めました。
まず商品を手に取ってもらい、そのあとにつくり手を知ることで、それまでのイメージが変わっていく。
そのために衛生管理を徹底し、食品表示について何度も学びました。「川口のお土産」を目指すからこそ、川口という地域のブランドを下げないものをつくりたい。そんな思いで品質を追求してきました。
そして、ベーゴマクッキーが誰かの手に渡り、「おいしかったよ」と言ってもらう。
石﨑さんは、それを、つくった人たちの「分身」が地域へ出ていくようなものだと話します。
本人がその場所にいなくても、自分が関わった商品が地域の誰かへ届いている。
「自分も地域とつながっている」「誰かの役に立っている」と感じることが、「生きること」や「幸せ」につながって
いけばいい。

メンバーさんに好きな仕事について聞いてみました。みなさん口を揃えて「生地を型につめるのが楽しい!」
そしてharebareを、障がいのある人だけにとっての特別な場所ではなく、「地域に暮らす人たちにとっての特別な場所」にしていきたいと話します。
一枚の小さなベーゴマクッキーから、人と人、そして人とまちがつながっていく。
そんなharebareのものづくりには、一人ひとりの「できる」を見つけながら、みんなで形にしてきた時間が積み重なっています。
今年のトントゥフェスティバルにも、さまざまな人の「できる」から生まれたものが集まります。
ベーゴマクッキーを手に取ったときには、ぜひ、その小さな形の向こうにあるharebareのものづくりにも、思いを巡らせてみてください。

ベーゴマクッキーをはじめ、さまざまな味わいの焼き菓子が並ぶharebareの店頭。上段には「麦味噌キャラメルサンド」
トントゥフェスティバルで、harebareのものづくりに触れてみませんか
harebareのお菓子は、トントゥフェスティバルのマルシェに並ぶほか、「インクルーシブなお茶会」のお茶菓子としても提供されます。
記事でご紹介したものづくりの背景に思いを馳せながら、ぜひ会場でも味わってみてくださいね♩
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体験ワークショップ|トントゥフェスティバル2026
▶ インタビュー動画はこちら
石﨑さんをはじめ、トントゥフェスティバルに関わる皆さんのインタビューをご覧いただけます。
YouTubeで見る
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NPO法人ヒールアップハウス 晴れ晴れ
〒333-0853 埼玉県川口市芝園町3−19
https://harebare.org/