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スペシャルインタビュー④ 日本ユニバーサルボッチャ連盟 渡辺美佐子さん
#インクルージョン「やりたい」から始める。ユニバーサルボッチャがつくる、自分で考え、自分で動く経験

トントゥフェスティバルで出会う人やもの。その背景には、それぞれの思いや物語があります。
今回お話を伺ったのは、日本ユニバーサルボッチャ連盟の渡辺美佐子さん。
「ボールを投げられないから、できない」ではなく、「やりたいなら、どうやったらできるかを考えよう」。
渡辺さんが話すユニバーサルボッチャには、そんな考え方が一貫しています。
自分で考えること。自分の意思を伝えること。必要なときには人に頼ること。
ボッチャを入り口にしながら、その人自身が「自分でできた」と感じられる経験を増やしていく。渡辺さんが大切にしているのは、そんな時間です。
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「できない」で終わらせない

キャプション:ボールを転がすための投球補助具「ランプ」を使ってプレーする様子。
競技としてのボッチャには、決められたルールがあります。
一方、渡辺さんたちが取り組むユニバーサルボッチャでは、まず「その人がどうしたら参加できるか」を考えます。
手でボールを投げる人もいれば、「ランプ」と呼ばれる補助具を使う人もいます。競技では異なるクラスに分かれてプレーする場合がありますが、ユニバーサルボッチャでは、一緒に楽しむための方法を考えていきます。
「このルールではできないから参加できない」で終わるのではなく、やりたい人がいるなら、「この人だったらどんな方法ならできるだろう」と考える。
自分でボールを投げることが難しくても、別の方法なら参加できるかもしれません。
大切なのは、決められた動きとまったく同じことができたかではなく、その人が一生懸命取り組み、「できた」と感じられること。
渡辺さんは、そこから生まれる成功体験を大切にしています。
「自分に何が教えられるんだろう」から始まった

キャプション:インタビューに答える渡辺さん。
渡辺さんは、もともと学校体育の教員でした。
あるとき、身体をほとんど動かすことができないほど障がいの重い人たちに体育を教える場があるけれど、行ってみないかと声をかけられます。
「自分に何が教えられるんだろう」。
戸惑いながらもその場へ行き、まずは特別支援学校の先生にお願いして、体育の授業を見せてもらうところから始めました。
さまざまな人と関わる中で、渡辺さんの考え方も変わっていきます。
身体を動かすことが難しくても、その人自身が満足できることが大切なのではないか。
そう考え直したことをきっかけに、「この人たちがいろいろなことをするためには、どうすればいいのか」を考えるようになったといいます。
体育館で、ずっと座っていた子

キャプション:体育館で行われているボッチャの活動風景。
渡辺さんが関わってきた中には、車いすを使いながら地域の小学校へ通っていた子もいました。
体育の時間には、ほかの子どもたちと一緒に体育館へ行きます。でも、そこで言われていたのは「あなたはここに座っていなさい」ということだったそうです。
寒い冬の日も、ほかの子たちが身体を動かす中で、座って過ごしていました。
こうした経験も、同じやり方ができるかどうかではなく、その人が参加できる方法を考えるという、渡辺さんの現在の姿勢につながっていきました。
その発想は、ユニバーサルボッチャにも通じています。
「ここは、この子たちのクラブだから」

キャプション:クラブでボッチャに取り組むメンバーたち。
渡辺さんが関わるクラブは、もっと子どもたちが楽しめるボッチャをしたいという思いから、保護者たちが立ち上げたそうです。
競技のルールを理解することを先に求めるのではなく、まず本人が楽しみながら参加できること。その中で、どう投げるか、どんな方法ならできるかを本人と一緒に探していきます。
そして練習を重ね、大会に出られそうな人は、次のステップへ進んでいきます。

キャプション:長くチームに在籍するふたり。「障がいがなくても、あっても、一緒にできるのが楽しいです」
クラブでも、渡辺さんが中心になって一から十まで指示することはしません。
「ここは、この子たちのクラブですから」
ウォーミングアップも、自分たちで何をするのか考えて進めます。分からなければ、自分から聞きに来る。
渡辺さんが「次はこれ」「あなたはここ」と全部伝えれば、その場は早く進むかもしれません。でも、それでは本人たちが考える機会までなくなってしまいます。
長くクラブを続けてきた人たちには、変化も見えてきました。
以前は何かを聞かれると、隣にいる母親の顔を見たり、反応をうかがったりしていた人が、自分の言葉で答えるようになってきたといいます。
障がいがあるから「この人はできない」と決めるのではなく、本人が考えたことを受け止める。
「いいこと言ったね」「それでいいんだよ」。
自分の意見を認めてもらう経験も、自分の言葉で話す力につながっていきます。
コートの外でも、自分でやってみる
ボッチャを通して育っていく「自分で考える」という経験は、コートの外にも広がっています。
渡辺さんが別の場所で講習や審判をするときには、クラブのメンバーに手伝ってもらうことがあります。
そのとき伝えるのは、
「何時に、この駅に集合ね。そこまで自分で来られるか考えておいで」
ということ。
必要な確認はしながらも、どうやって行くかまですべて先回りして教えるわけではありません。
困ったら駅員さんに聞く。トイレの場所が分からなければ、自分から尋ねてみる。
以前なら「トイレが見つからなかったらどうしよう」「失敗したらどうしよう」と不安だった人も、聞けばいいと分かれば行動できる場所が広がります。

キャプション:事故により後天的に障がいを持ったメンバー。ボッチャ以外に一番やりたかったのは「飲みに行くこと」。「やっちゃいけない」「できない」と考えられがちなことでも、どうやったらできるかを自分で考えてもらい、実現させた。
「今まで行けないと思っていたけれど、行けるかもしれない」。
その感覚が、自信につながっていくと渡辺さんは話します。
自分のボッチャ用のボールが欲しいときも同じです。
自分のお金で買えるのか。家族の助けが必要なら、「これをしたいからお願いします」と自分から頼む。
講習や審判の手伝いで昼食が必要なときも、自分が安心して食べられるものを自分で考えて用意する。
一つひとつは小さなことでも、自分の生活について自分で考え、行動する経験が、こうした場面から積み重なっていきます。
「やりたい」と言うところから
渡辺さんたちは、トントゥフェスティバルに初回から参加しています。
最初は雨の中、軒下の小さなスペースにコートを敷いて行ったといいます。
その後はより広い場所へと移り、市販のコートを借りながら、ボッチャを体験できる場をつくってきました。
場所や形は変わっても、渡辺さんが大切にしていることは変わりません。
「自分の意思を出してほしい」

ボールを投げることが難しいからといって、「自分にはできない」と最初から決めるのではなく
「やってみたい」と思った人がいるなら、どうすれば参加できるのかを一緒に考える。
投げ方を変えるのか。道具を使うのか。その人に合った方法を探していく。
渡辺さんたちがユニバーサルボッチャを通して大切にしてきたのは、できることを周りが決めて与えるのではなく、まず本人の「やりたい」を出発点にすることでした。
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今年のトントゥフェスティバルでも、日本ユニバーサルボッチャ連盟によるユニバーサルボッチャ体験が行われます。10月3日・4日の両日、10時から16時30分まで開催され、参加は無料です。
講師と一緒に、気軽にボッチャを体験できます。
トントゥフェスティバル2026 | みんなで楽しむ、出会いと体験のフェス
会場を訪れた際にはぜひユニバーサルボッチャを体験してみてくださいね♩
▶️インタビュー動画はこちら
渡辺さんをはじめ、トントゥフェスティバルに関わる皆さんのインタビューをご覧いただけます。