ニュース
スペシャルインタビュー②デイセンター山びこ 伊藤千幸さん
#インクルージョンだるまをつくる、その先へ。デイセンター山びこがつなぐ、人と地域

トントゥフェスティバルで出会う人やもの。その背景にある思いをお届けするインタビューです。
今回ご紹介するのは、東京都武蔵野市にある「デイセンター山びこ」。
ここでは、織物や絵画などさまざまな創作活動が行われ、そのひとつとして「山びこだるま」がつくられています。
一つひとつつくられる、小さな山びこだるま。
その背景をたどると見えてくるのは、ひとつの商品が生まれるまでの話だけではありません。
どうしたら一人ひとりが安心して関われるのか。
その人に合った方法を、どう見つけていくのか。
そして、そこで生まれたものをきっかけに、どう地域とつながっていくのか。
今回は、デイセンター山びこの伊藤千幸さんに、日々の活動や
山びこだるま、ものづくりの先にある思いについて伺いました。
・・・
何をするかよりも、まず「お互いを知る」

キャプション:山びこでのだるまづくりの様子
デイセンター山びこは、武蔵野市に住む18歳以上の知的障がいのある方が通う、日中活動の支援施設です。
地域の広報紙のポスティング、織物やだるまづくり、絵画、ウォーキングや畑作業など、活動はさまざま。
ですが、最初から「この人にはこれが向いている」と決めるわけではありません。
「まずは、何を始めるか、何を作るかではなくて、日々の活動の中でお互いを知る。お互いに信頼関係を持てる、そういうところから始まると思っています」
何をつくるかよりも先に、その人を知る。
一緒に過ごし、少しずつ関係が育った先で、「こんなことに挑戦してみようか」「こんなものを作ってみようか」という次の一歩が生まれます。
山びこの理念は、「あたたかいつながりをはぐくみながら自分らしく生きる」。
人とのつながりについて「障がいがあるなしにかかわらず、大切にしたい」と考えています。
ものづくりの前に、人との関係がある。
それが、山びこの活動の土台です。
始まりは、シュレッダーの紙だった

キャプション:だるまづくりに使われるシュレッダーの紙
山びこだるまが生まれたのは、今から10数年前。
ある職員が「安全に、安心して取り組める創作活動はないか」と考えたことが始まりでした。
目に留まったのは、日々たくさん出ていたシュレッダーの紙。
「何かこれで作れるんじゃないか」
そこから考え、たどり着いたのが「だるま」でした。

キャプション:材料をボウルに入れ、少しずつだるまの形をつくっていきます。
縁起物でもあり、山びこを飛び出していろいろな人が手に取ってくれるかもしれない。
そんな思いから、職員は高崎まで足を運び、だるまづくりを学びました。こうして「山びこだるま」が生まれます。
伊藤さんによると、当時の職員が考えていたのは、利用者さんが安心して取り組める創作活動をつくることだけではありませんでした。
完成しただるまが誰かの手に渡り、そこから新しいつながりが生まれることまで見据えていたといいます。
安心してつくれること。
そして、つくったものを通して誰かとつながれること。
山びこだるまは、そんな思いから始まりました。
一つのだるまに、いくつもの「関われる」がある

キャプション:一つひとつ、手作業で色をつけていきます。
だるまづくりには、いくつもの工程があります。
色をつける。
お椀に入れて形をつくる。
一人がすべてを担当するわけではありません。
「全部はできなくても、だるまの色付けならできるとか、お椀に入れて形を作ることならできるとか。たくさんの工程があるからこそ、いろいろな部分で利用者さんが関われるというのが、とてもいいところだなと思っています。」

キャプション:ほとんどの時間みんなの作業を眺めて過ごしているが、わずか5分だけ集中してだるまづくりに加わる。その工程もなくてはならない必要なもの。
始まった頃は、「何が始まるんだろう」「何ができるんだろう」というところからのスタートでした。
けれど、繰り返し取り組むうちに少しずつ分かるようになり、自信を持って取り組めるようになった利用者さんもいたといいます。
また、何人かで一緒に作業する中で、誰かの楽しそうな雰囲気にのって「私もやってみよう」と気持ちが動く人もいます。

キャプション:だるまづくりに取り組む利用者さん
「利用者さん一人ひとり、それぞれに合った方法を工夫することが私たち支援者の役割であって、それが利用者さんの可能性を広げることにつながると考えています。」
その人に合うやり方を探すこと。
そこから、新しい可能性が見えてきます。
支援者の想像を超えて生まれてくるもの

キャプション:色付けされた山びこだるま。さまざまな色や表現が生まれます。
山びこでは、だるま以外にもさまざまな創作活動が行われています。
伊藤さんは、利用者さんたちについてこう話します。
「私たち支援者が接する上では、障がいのある人というよりも、一人ひとりがとっても魅力的で、個性的な人たちだなと感じています。」
創作の中では、ときに支援者が想像していなかったものが生まれることもあります。
きれいだと感じるもの。
面白いと感じるもの。
「本当に感情が揺さぶられる時があります。。そういう感動を、一人でも多くの人に味わってもらえたら嬉しいなと思います」
一人ひとりから生まれてくる表現に、支援者自身の心が動く。。
山びこのものづくりには、そんな瞬間もあります。
つくったものが、笑顔で誰かの手に渡る

キャプション:色も表情もさまざまな山びこだるま。
山びこで生まれた作品は、社会福祉法人武蔵野の複数の事業所によるものづくりプロジェクト「つむぐと」の商品として販売されています。
コンセプトは、「はたらく・つたえる・つながる」。
利用者さんの日々の働きから生まれた商品を社会へ届け、利用者さんのことを知ってもらい、人とつながっていくことを目指しています。
展示販売会では、利用者さん自身が作品を販売することもあります。
「直接地域の方だったり、お客様に手渡すことができる。それは生で触れ合う時間になっていて、そのことがとても喜びにつながって、次の作品を作る意欲につながっている人もいると感じています。」
その経験を直接感じ取れる方もいれば、そうではない方もいます。
けれど、その場その場の一瞬に、自分がつくったものが笑顔で誰かの手へ渡っていくことを感じられる場面もあるといいます。
また、その日の出来事を支援者から家族へ伝えることで、家族が喜ぶこともあるといいます。
つくったものが誰かの手に渡り、その出会いが、また次の「つくってみよう」へ返っていく。
ものづくりは、そこで終わりません。
小さなだるまから、地域に「応援団」を

キャプション:日々の活動の中で、利用者さんと支援者が関わり合う様子。
山びこだるまは、施設の外でも人との出会いを生んできました。
夏休みには、武蔵野市内で行われたワークショップに山びこも関わり、利用者さんも一緒に携わりました。
子どもたちがだるまを手に取り、それぞれのだるまを仕上げていく。
そうした経験を通して、子どもの頃から少しでも山びこのことを知ってもらえたらと考えています。
そして、その子どもたちが大人になる頃に、今よりも障がいのある人への理解がある社会になっていてほしい。
山びこが目指しているのは、山びこを知ってもらうことだけではありません。
利用者さんが住み慣れた地域の中で、長く、安心して暮らしていくことです。
「山びこの応援団をたくさん作って、皆さんのことを知ってもらって、皆さんの仕事を知ってもらう。それが、ここで暮らしていく皆さんにとって住み良い場所になる、そういうことにつながっていったらいいなと思っています」
一つのだるまをきっかけに、山びこを知る人がいる。
ワークショップで出会う子どもがいる。販売会で、作品を笑顔で受け取る人がいる。
そうして少しずつ増えていく人とのつながりを、山びこは「応援団」だと考えています。
ものをつくることから、人と出会うことへ。
人と出会うことから、その地域で一緒に暮らしていくことへ。
山びこだるまをきっかけに、そんなつながりが少しずつ地域へ広がりつつあります。
・・・
手に取ることも、つくることも。
会場で、山びこだるまに出会ったとき、その向こうにいる人たちや、ものづくりの背景にも思いを巡らせてみてください。
その出会いもまた、山びこから広がる新しいつながりの一つになるのかもしれません。
トントゥフェスティバルでは、そんな山びこだるまに自由に顔を描いたりデコレーションできるだるまづくりのワークショップが行われるほか(実施はディーセントワーク・ラボ)、マルシェのセレクト販売エリアでは、デイセンター山びこも参加するものづくりプロジェクト「つむぐと」の商品の販売も行われます。
▶️ インタビュー動画はこちら
伊藤さんをはじめ、トントゥフェスティバルに関わる皆さんのインタビューをご覧いただけます。
============
社会福祉法人武蔵野 デイセンター山びこ
〒180-0001 東京都武蔵野市吉祥寺北町4丁目11−16 障害者総合センター
https://fuku-musashino.or.jp/facility/yamabiko/